父は山形の酒田から出てきた根っからの東北人の素朴な大工の棟梁でした。
母は両親を早く亡くし、兄弟姉妹を養って頑張ってきた千葉の鴨川の苦労人でした。
そんな二人の間に私が生まれ、夫婦で工務店経営を始めました。
時は高度経済成長時代、東急沿線の開発の波に乗り、銀行との交渉も母がうまく乗り切り 市内一番の工務店へとのし上がりました。
しかし、10周年パーティーで様々な銀行支店長が「内助の功」の話をして母を褒めちぎり、頑固一徹の職人気質の父はおもしろくなかったようです。
お祝いの席で「内助の功」を述べるのは一般的な事なのですが、職人一筋の父には経理や銀行との交渉の話題など、どうでもよかったようです。
とにかく「いい家を建てる」それしかなかったようです。
いつしか、夫婦の争いが絶えなくなり母と妹は別居する事になり、母は担保も何もない状況の中、銀行から資金を受け不動産業を始めました。
もちろん、その頃の不動産業界は男の世界。
ところが女社長として市内では知らないものはいない「成功した女社長」として有名になりました。
そして、父とふたり家に残された私は母のいない生活にふてくされていました。地主でもなんでもない母が数多くの土地を買い、賃貸事業もすべて成功した事は商売の才能として先見の明があったと今は素直にそう思います。
(本物のものづくりはクライアントの為のカイゼンである)
家電量販店では他のアジア(韓国・台湾製)の物ばかりが安く売られ、パナソニックもソニーもシャープもすべてとんでもない赤字になってしまいました。
トヨタの亡くなった豊田社長が述べておられましたがパソコンは所詮、人間の道具でありあくまでも「ものづくり」がすべてです。
今一度 日本の優れた職人の力を復活させたいのです。
(資源のない日本には尚更です)
そして、トヨタのようにカイゼンにより優れた「ものづくり」を見出し、銀行・証券のリーマンショックの教訓を思い出し、今一度 感動する「ものづくり」を目指してチャレンジし続けて行きたいと思います。
そんな中、日本では100年を越える中小企業も他の先進国よりも圧倒的に多いのが事実です。
伝統も進化していかなければクライアントの同意も得られず衰退するだけです。インスパイアーされる発想力豊かな商品により、ものづくりと商いは両立すると確信しています。
日本は職人がすべてを支えていると私は思います。
最近50才近くになり、工務店経営を引き継いだ中でやっとわかってきたのは「ものづくり」に対してただ頑固一筋だけでなく、本物の商品を生みだせるならば世間に知らせる努力が必要です。
そして、行動力も必要です。
その事は商才として、とても上手だった母から学びました。
まずはマザコンの寂しがり屋からの脱却を図る必要があります。
はっきり言って工務店の地位は低く、カイゼンしたく設計事務所の経験だけを頼りに地位の向上を図っていました。
小さな工務店ができる独自性・チャレンジ精神・インスパイアする商品力を「ものづくり」の原点として築きあげたいです。
アップルの創始者 ジョブズ氏はソニーとイッセイミヤケのファンだったそうです。
どちらも禅に結びつく凛としたコンセプトのもとに「ものづくり」に取り組んでいます。
住宅のプラニングもコンセプトひとつですべてのディティールが決定されていきます。
もちろん、工務店だからとモンスタークレーマーに媚びる必要もなく自信を持って本物のプロフェッショナルとしてクライアントの真の要望を読み取る力をつけていきたいです。
そして、素晴らしい職人と共に「ものづくり」に励めば設計事務所・工務店そして不動産業の垣根をなくせると信じております。
昔、ヨーロッパでバック担いで建築貧乏旅行していた時にドイツの農家の人や数学の先生、スペインのお医者さん、などと友達となりましたがドイツでは総合大学に行くのはひと握りで国が早い時期に専門的プロフェッショナルを育てる学校が多数あり、一流職人としてのマイスター制度があります。
よって、どんな職業の人もすべて自尊心を持ち自分の仕事にプライドを持っております。
また、京都を旅した際に京都の友人に言われたのは、新興住宅地の気味の悪さです。
丹後地方などは街中に職人がいて、街が活気づいています。
都内では根津や谷中に少し残ってますが下町が基本です。
「ものづくり」をする職人がいなくなれば農業・建築・漁業そして街並みもずべて崩壊します。
銀行や生命保険・大手資本会社ばかりの世の中がうまく行かないのはリーマンショックで明らかになっています。
面倒くさらずに「ものづくり」する、それが基本だと思います。
ハウスメーカー・建売系ビルダーがなぜ自然素材や本物の材料を使わないのか。それはほんの少し工期が延びるからです。
お客様にとっては一生の買い物です。
2・3週間程、伸びても何の問題もないと思います。
私は建築史の研究室にいたので、そのルーツをたどるのが好きなのですが、例えばイギリスには高級住宅のイメージとしてレンガ造りの家があるが、本来は石造住宅に憧れた人がその場しのぎにレンガ造でしのいだものです。
あと、スウェーデンの赤い住宅もベンガラで板を塗ったローコスト住宅が基本となっています。
また、プレハブ住宅は昭和基地を造る時にセルフビルドとして速やかに組み立てられるものとして開発されました。
軽量鉄骨の住宅も大量生産がしやすい住宅として生み出されています。
歴史は浅く、本質は変わっていません。
そこで工務店の使命としては木造住宅が主となりますが、木造の歴史は古く現在、ヨーロッパを始めとして耐火木造建築も含め国の方針として進められています。
木は表面が燃えても内部は燃えにくいです。
むしろ、アルミや軽量鉄骨はすぐに火に対して曲がってしまいます。
そして、何より国が進めている地域の木材を使えば林業も復活し、里山も守られ海も守られます。
荒れ果てた農業・林業の国に未来はありません。
基本性能が一番高い木造住宅をクライアントに提供し、可能性の一番高い木造住宅を長く、愛してもらう努力それが工務店の独自性と信じています。
もちろん、設計力に関しては日々に研鑽します。
しかし、ゴテゴテした見栄っ張りな外観に惑わされず本物の持つ存在感に囲まれて安らぎのある住宅を提供したいです。
工務店・ハウスメーカー・建売系パワービルダー・建築家と様々な選択の中、注文住宅を造られると思いますが私はアトリエ系(所員5名)・大手総合設計事務所(所員250名)・中堅設計事務所(所員15名)と大学を出てから経験して参りました。
よって設計スタッフと共に優れたプランニングを通常の工務店よりはカバーできます。
そして、小さな工務店の強みとして、面倒くさがらずただ早く出来てしまう大量生産の家には目もくれず、クライアントに対して本物の材料の魅力を伝え、奥深いデザインの魅力も伝えたいと思っております。
そして、何より長く愛される商品を提供する事が使命と感じております。
在来木造住宅がその役目をきちんと果たしているのは「スケルトンリフォーム」に耐えられるこの工法のみという事でも、証明できます。
基本性能の高い柱と梁の住宅ならば何十年後の家族形態の変化にも対応できます。
よってローコストで素晴らしい住宅を造りたいならば将来の可変性も含めて考えるとより一層、豊かな生活が将来に渡って続けられます。
工務店の使命として基本性能の高い住宅を適正な価格で提供できるように日々、勉強し続けております。
宝建設では日々、クライアントのご要望にかなえられるように地下室付住宅(混構造)・耐火木造住宅・スキップフロア住宅など敷地条件や要望を合わせて限りなく満点に近い住宅を造り上げます。
大量生産メーカーにはできない手造りの住宅を目指しています。
よって、日々建築の勉強は進めており、現在は木組みゼミナール(本格木組みの家)・住宅医スクール(スケルトンリフォームの勉強)・家づくり学校(建築家と共にものづくり、プラニングを学ぶ)と通っております。
そして、来年以降も日々勉強を続け、そのプロフェッショナルな力を少しでも提供し続ける会社でありたいと思っております。
工務店の使命であるローコストでありながら、今まで弱点だった設計力を強化し、職人が誇りを持って仕事ができる住宅を造り上げます。
それこそが宝建設の真のおもてなしです。
来年から茶室の設計教室にも通いますが、丸柱の礎石に建てる方法で「ひかりつけ」という言葉があります。
礎石の形に合わせて四次元の世界でぴったり合わせる古来からの方法です。
この事によりしっかりと密着し、地震が来ても持ちこたえるようになっています。
古い茶室や城などの改修・新築はすべてこの方法です。
(最近は直下型地震がきても耐えられるようにステンレス棒を仕込みます)
とにかく、職人の技術力はすごいです。
私もそんな茶室職人を何人か知っておりますがやはり、残念ながら世にその技術力は知られていません。
知られるのは設計士だけです。
設計士のコンセプトが世の中を変えていくと思っています。
よってアーキテクトビルダーを目指します。